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【神奈川大学水泳部】コロナ禍で女子日本一になるまでの裏舞台-優勝チームのマネージャーの軌跡-

神奈川大学水泳部は創部90年にして、インカレ(日本学生選手権水泳競技大会)で初めて女子総合優勝に輝いた。大学水泳界は、オリンピック選手を輩出するなど日本の水泳界を牽引する存在でもあり、非常にレベルが高い。コロナ禍の中、練習もままならない状況でなぜ神奈川大学が優勝できたのか。
そこには、一人ひとりの能力を引き出す工夫を凝らしチーム力を高めていくため奮闘した、あるマネージャーの姿があった。

張り詰めていた緊張感

私は日本学生選手権、最終種目800mフリーリレーが終わった瞬間、涙した。

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<写真:水泳部チーフマネージャーの人間科学部4年荻原謙太さん>

それはチームの目標としていた日本学生選手権女子総合日本一を獲得した瞬間であったからだ。そして、今まで重くのしかかったプレッシャーや疲労、張り詰めていた緊張から一気に解放され、今までに味わったことのない脱力感の中にいた。立つ事さえもできず、喜びを越えてホッとした瞬間であった。


「自己満足の日本一」から「与えられる日本一」へ

私は高校3年生の時から大学での日本一を目指してきた。しかし、大学1年では「4番」、2年で「2番」、3年も「2番」に終わった。そんなに甘くはなかった。大学1年生の日本学生選手権では大学水泳の怖さも知らず、私の心の中では勝てるものだと勘違いをしていた。
学年が上がるに連れて日本一に対する想いが強くなり、次第に積極的な行動をとるようになっていった。ただ、それでも勝てない。


上級生最後の大会。隣で人目もはばからず悔し涙を流す上級生の姿を見て、当時3年であった私には、大学水泳はそんなに簡単で楽なものではない、と心に痛く刻まれた。そして「日本一は自己満足のためにではなく、今までチームを作ってきてくださったOBOGの皆さんのためにこそ成し遂げなければならない」と、心の底から湧き出るように、そう思った。そして、これまで長年神奈川大学水泳部を守ってきてくださった監督・コーチ、スタッフの皆さんに誇ってもらえるようなチームを作りたいと思うようになった。


今までは「自己満足の日本一」だったが、人に喜んでもらいたい、誰かのために勝ちたいと「与える日本一」へと私のなかで日本一の価値観が変わった。


マネージャーに必要な素養。それは「冷静さ」と「熱さ」

4年生が引退。私は最上級生となった。選手37名、マネージャー7名の体制でスタートした。引き続き日本一への目標は変わらない。
私は、新チームのチーフマネージャーに任命していただき多くのことを考えた。そして、マネージャーには「冷静さ」と「熱さ」を持ち合わせることが大切であると悟った。

水泳部3

まず「冷静さ」を持つことで、緊張感漂う大会会場であっても、選手を動揺させずに心強く対応することができる、結果それが選手とマネージャーの信頼関係につながると考えた。

そして「冷静さ」を備えるためには、心に余裕をもち常に的確で素早い判断をすることが必要だと思った。そこでまずは、普段マネージャーの作業場として使用しているコーチ室を作業のしやすいよう、大幅な模様替えからスタートした。作業の効率化とミスを減らすことで、自分の時間が増え、選手とのコミュニケーションを多く作れる。つまり、余計なことに時間を割かれずに、心に余裕が生まれ選手を存分にサポートできる、そんな考えからだった。


次に「熱さ」だ。ただ熱くなることは簡単で、その中でマネージャーが、選手一人ひとりに理想を持つことが大切だと思う。選手にどうなってほしいか、チームが勝つにはあの選手はどうならなければいけないのか。そして、常にマネージャーで選手についての共有や理想についてのミーティングを積み重ねた。一人の選手の話だけでミーティングが終わることもあったし、台風で練習が中止になった時でも欠かさず行った。


日本学生選手権で1番を獲ることは、チームの総合力が大切で一人ひとりの立場・責任を全うしなければならない。そのため日本一を獲るためには全員の力が必要だ。大会本番は積み重ねがそのまま形になって表れる。その考えを1年間、今年のマネージャーは理解し、行動していたと私は思う。


緊急事態宣言。自分にできることはないか

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4月のはじめ、緊急事態宣言が発令されチームは解散し選手達は地元へと戻る事になった。これには私だけでなくチーム全員が絶望した。多くの選手が下を向いているなか、監督・コーチが何か出来ることはないか考えているということを知った。私も、神奈川大学水泳部のチーフマネージャーとして何か出来ることがないか考えに考え抜いた

部員と直接会うことは出来ない中、同期の多くのアイディアと行動がチームを作ることにつながった。例えば、お互いの現状把握やチームビルディグを兼ねて、6人1グループのリモート交流会を週に1回必ず行った。また、水泳部独自のホームページを作成しトレーニング動画などを共有し合うことで、選手間のモチベーション維持につなげた。


段階的に学内での練習再開が認められ、選手達が神奈川へ戻ってきた。ここから日本学生選手権に向けて再スタートをしたいところだが、行動に制限があり、選手にとって最適な状況が揃わなかった。その中でマネージャーとしてありとあらゆる事を想定して、何にでも対応が出来るようミーティングを重ね、多くの状況に対応してきた


特に、普段神奈川大学水泳部では学食で朝晩の食事を提供していただいていたが、学内立ち入り禁止ということもあり、選手の食事を確保することが出来なかった。そこで、マネージャーたちで集まって大学周辺でアスリートが食べられるようなお店やお弁当屋さんをピックアップし、実際に伺って内容やコストを比較し何とか提供していただけるお店を見つけ出すことが出来た。


本番である日本学生選手権も例年とは開催方法が異なるため、その中で選手がベストパフォーマンスを出せるような運営をしなければならない。マネージャーも何が何だか分からない状況で動かなければいけない。しかし、私たちマネージャーは分からないものをそのままにするのではなく、完璧に当日を迎え心に余裕を持った立ち振る舞いをしなければならないと思った。そのため、大会の約1週間前には全マネージャー、サポートスタッフ、監督・コーチスタッフ陣の大会全日程の行動予定を時系列順にまとめ、逐一ミーティングを行った。

その結果、大会中は焦ることなく冷静な行動をとれた。行動予定はすべてが順調には行かなかったが、ほかのマネージャーによる好判断などにより、さらに良い方向へ向かうことができた。各マネージャーの良さを引き出せ、例年と開催方法の違う大会をチームトラブルなく円滑に勝ち進めたと感じている。


勝てそうな雰囲気  から  勝てるという確信へ

今年は行動が制限されている事が大前提。その中でいかに工夫し、チームを作れるかが勝負だと考えていた。そこで4年生を中心に、日本一に対しての想いを、言葉で表現することでチームを作っていった。実際に、チームでの戦い方を知らない1年生は、4年生の言葉一つひとつが心に響いていったようだった。次第にチームが日本一になるため、一人ひとりが自分の役割を把握してその任務を全うしていった。そして、ただ「日本一になりたい」のではなく「〇〇のために日本一になりたい」と日本一への想いがより具体的になった。


今年のチームには、自分だけに囚われず仲間を引き上げる姿勢があったと思う。それはチームで勝ちたいという強い気持ちから生まれるものだと感じた。誰かに言わされる目標ではなく各個人が日本一になりたいという意志があった。苦しいほど熱く、全員が勝つために人生を懸け、魂の通ったチームに仕上がった。


この酷な状況を克服し、互いにチームのことを思い練習できていることの幸せを心で噛みしめながら進んできた結果が、日本一という勝利へと繋がったと思っている。


みなさんに感謝

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<写真:アイディアを出し合いコロナ禍を乗り切ったマネージャーたち 左から3番目がチーフマネージャーの荻原さん>

とうとう悲願の日本一に輝くことができました。
今まで神奈川大学水泳部を作り上げ、築き上げてくださった監督・コーチ、スタッフに感謝をしています。そして、ここまで強く想いを繋げてくださったOBOGの方々にも感謝をしています。


この戦いを通して、人の気持ちを背負う過酷さ、そして背負って力に変えた時の強さを身をもって感じました。そして、泣けるほど努力を続けられるチームであったこと、最後は勝てるチームになったことを誇りに思います
謙虚に頭を低く信念を貫く。自分の道を否定することなく自分を信じ努力をすること、大切ですね。

僕は言葉には表せないほどの何か幸せを感じています。
このチーム、先輩、同期、後輩、神奈川大学、多くの方々に感謝します。
ありがとうございました。

 <神奈川大学水泳部チーフマネージャー 人間科学部4年 荻原謙太>


ありがとうございます。
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もっと、神奈川大学のことを知ってもらいたい。 たくさんの「人」が行き交い、新たな可能性が生まれる場に。

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